TOEICのハイスコアを目指して学習に励む人がいる一方で、「TOEICなんて意味ない」という意見も耳にします。「意味ない」と言われる1番の理由はスピーキング力を測れないから。
私は英語講師を20年以上していますが、実際にTOEICで高得点でも英会話は苦手という人がいます。
では、TOEICで高得点を取る意味はないのでしょうか?
そんなことは決してありません。私はTOEIC学習には意味があると思っています。
この記事では、英会話スクールで10年指導し、さらに数多くの大学や企業研修でTOEIC対策を教えてきた私が、TOEICの限界を理解した上でそれでも受験をすすめる理由をお伝えしていきます。
TOEIC学習に疑問を感じている人、受験するか悩んでいる人はぜひ参考にしてください。点数に振り回されずに上手にTOEICとお付き合いしながら、本物の英語力を身に付けるきっかけになるはずです。


Anne(アン)
英語講師/学習コンサルタント
大学時代、英語科に進学したものの英会話力はゼロ。悔しさをバネに努力を重ね、留学なしでTOEIC980点・英検1級を取得。自らの経験をもとに、英語学習に役立つ情報を発信しています。
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「TOEICは意味ない」と言われる5つの理由


なぜ「TOEICは意味ない」と言われるのでしょうか?「意味ない」と言う人の主な主張をまとめてみましょう。
スピーキング力を測れない
一般的にTOEICというとL&Rテストを指し、リスニングとリーディングのスキルを測ります。つまり、スピーキング力は測れないのです。
L&Rテストで高得点をとっても英語が話せるとは限らず、実践的な英語力の証明にはなりません。
TOEICにはS&Wテストもあり、スピーキングやライティングというアウトプットスキルを測定できます。しかし、受験する人はまだ限られていて、「S&Wで◯点」と言ってもいまいちピンとこない人が多いです。
そのため、「TOEICで900点取っても話せなければ意味がない」と考える人がいるのも仕方がないと言えるでしょう。
試験テクニックでスコアが変わる
TOEICに限ったことではありませんが、試験で高得点を取ろうと思えば「試験対策」が必要になります。
大学受験と同様に、試験の傾向を分析し、それに合わせた学習をすることで高得点を取れるのです。
実際、私もTOEIC対策のレッスンを教える時は、テストの傾向や解き方のコツ、時間配分等を教えることにかなりの時間を費やします。
こういった「試験テクニック」を知っているかどうかでスコアが大きく変わるからです。
そのため、「英語力が高くなくても試験テクニックだけで点数が取れる」と揶揄する人がいるのも、ある程度は理解できます。
仕事であまり役に立たない
仕事で英語を使わない人にとっては、TOEICで高得点を取ってもあまり意味がないと言えるでしょう。
また、仕事で英語を使う人にとっても、スピーキング力の判定ができないので「TOEICのハイスコア=ビジネスで使える英語力」とは必ずしも言えません。
実際に仕事で英語を使っている人の中にも、TOEICを受験したことがない人もいます。
私の生徒さんの中にも、「会社からTOEICのスコアを求められないので、受けても意味がない」とおっしゃる方がいます。
人によっては、TOEICスコアを持っていても仕事で役に立たないと感じているので、「TOEICは意味がない」という意見になるようです。
スコア目的だけの学習に陥りがち
本来の英語学習の目的が「仕事で英語を使えるように」だったとしても、TOEICの学習を始めると「スコアアップのための学習」に陥ってしまうことがあります。
特に試験テクニックにハマってしまうと、何のための英語学習かわからなくなってしまうことも。
その結果、英語学習が嫌になってしまったり、学習の目的を見失ってしまう人もいます。
「使える英語力を身に付けたい」と考える人にとっては、スコアアップのための学習は意味がないと感じられるでしょう。
海外では通用しない
TOEICは日本ではもてはやされる試験ですが、海外では英語力の証明として使えないことが多いです。海外留学を考えている人は、TOEFLやIELTSといった試験を受ける必要があります。
また、外資系の企業でTOEICのスコアは必ずしも重視されません。
実際、外資系企業で採用を担当している方が、「TOEICスコアよりも実践力を重視する」と言われていました。
TOEICの点数よりも実践力や別の専門スキルなどが重視されることも多く、「TOEICの点数は意味がない」と感じる人もいるようです。
私がTOEIC受験をおすすめする5つの理由


「TOEICは意味がない」と言われる背景をお伝えしましたが、「じゃあ、TOEICの学習をしても無駄」と感じるでしょうか?
TOEICのマイナス面を理解した上で、それでも私は「TOEICの勉強には意味がある」と思っています。私がそう感じる5つの理由をご紹介します。
英語力を可視化できる
「英語が得意」「英語ができる」と言っても、それがどれ位の英語力なのか客観的な判断をするのが難しいです。
企業の採用担当の方が英語が堪能であるとは限らず、社員の英語力の判定ができないケースも多いです。
テストの点数として数値化すれば、英語力の目安がわかります。
そのためには、皆が知っている共通のテストで比較するのがわかりやすいです。日本で知られている英語試験と言えばTOEICと英検ですが、TOEICは級ではなく点数で出るので比較しやすい。
TOEICではビジネス・シチュエーションの会話や文書が多数出てくるので、仕事で英語を使う人にとって英検より実践力につながりやすいというメリットもあります。
英語の基礎力を養える
「TOEICの高得点=英会話スキル」とは必ずしも言えませんが、高得点を取るためにはある程度の英語力が必要です。
TOEICスコアは「試験テクニック×英語力」。テクニックだけでは高得点を取れない。
TOEICで高得点を取るためには、語彙力や文法力など英語の基礎力が必要です。TOEICの学習を通じて、こういった基礎的な力を養えます。
単語や文法など、英会話に必要な英語の基礎知識を身に付けられます。
TOEICだけではスピーキング力は身に付きませんが、スコアが高い人の方が英語の下地ができているので、スピーキングも伸ばしやすいです。TOEICである程度の点数が取れるようになってから話す練習を始める方が、スムーズに上達していけます。
TOEICをきっかけに苦手を克服できることもあります。大学で留学プログラムを終えた学生を指導することもありますが、そういった学生は英会話は得意ですが、文法やリーディングが苦手な傾向があります。TOEIC学習を通じて苦手な文法を見直したり、正確な読解ができるようになっていくのです。
ビジネス英語を学べる
TOEICではビジネスシチュエーションでの会話や文書のやり取りが頻出します。TOEICの問題集を見れば、実践で使えるビジネス表現であふれているのです。
私は、ビジネス英語を学びたいという人に、あえてTOEICの教材を使ってレッスンをすることもあります。TOEICの単語学習でおなじみの書籍『金のフレーズ』も、ビジネス表現の宝庫です。
大学で指導するさいにも生徒たちには、「授業が終わっても、教材は取っておきなさいね。仕事で英語を使うときに役に立つ表現がたくさんのっているから」と話します。
ちなみに、日英翻訳の仕事をしていた時にも、TOEIC公式問題集の手紙やメール文が役に立ちました。ビジネスで使える定型表現がたくさん見つかります。
TOEIC問題集はビジネス英語の用例集と言ってもいいでしょう。
同僚相手のEメールや、お客様へのEメール等、相手との関係性によって表現がカジュアルになったり丁寧になったりしています。翻訳学校で講師から学んだ「相手や場面に応じてフォーマルさを変える」ことが、しっかり反映されているのです。
テスト対策としてだけでなく、実践的なビジネス英語を学ぶつもりで学習すれば、得られるものは多いです。
自分の立ち位置がわかる
英語を学習していると「自分の英語はどれくらい上達したのか」と疑問に感じることがあるはずです。
TOEICで測れるスキルは限定されているとは言え、英語力の一つの目安にはなります。
目に見えるスコアがあれば、学習の励みにもなります。モチベーションの維持にも役立つので、定期的にTOEICを受験するのは良いと思います。
私自身、1〜2年に1度はTOEICを受験して、自分の英語力を確認しています。
必ずしもTOEICでなくても良いですが、テストは上手に活用すれば学習に役立つもの。自分の立ち位置がわかれば、今後の学習で何をすべきかもわかりやすいです。
日本企業ではまだTOEICが重視される
外資系の会社などではTOEICスコアより実践力が重視されると書きましたが、日本企業の多くはTOEICのスコアを英語力の目安として使っています。
採用時や配属、昇進の際にTOEICスコアを参考にする企業は多いです。
私は大手会社から中小企業までさまざまな場所で英語を教えてきましたが、TOEIC対策を依頼されることが非常に多いです。それだけTOEICへの関心は高いのです。
実際に私がこれまで指導してきた生徒様から、以下のような声を聞いています。
- 一定のスコアに到達しないと昇進できない。
- 海外研修に参加するのに、TOEICのスコアが求められる。
- TOEICのスコアを達成すると昇給がある。
今後のキャリアや給与にも影響するので、「TOEICのスコアに意味がない」はずはありません。
TOEIC学習で気をつけるべきこと


「TOEIC学習に意味はある」と私は考えますが、一方で注意すべき点もあります。以下の点を気をつけた上で学習すれば、TOEICは英語学習のプラスに働くはずです。
英語学習の目的を忘れない
TOEICの学習をしながらも、本来自分が何のために英語を学んでいるかを忘れないようにしましょう。点数を追いかけるあまり、何のために英語を学んでいるのか忘れてしまうことがあるからです。
これはTOEICに限らないですが、英語学習を進めるうちに、本来の目的を見失ってしまう事はよくあります。英語でコミュニケーションが取れるようになりたいはずだったのに、テストの点数にばかり固執していては、目的から外れてしまいます。
学習の目的を手帳に書き込んだり、紙に書いて目に見えるところに貼っておくのもおすすめ。
TOEICはあくまで「英語力の1つの目安」と心得る
TOEICだけで英語力を全て測れるわけではありません。目標の点数を取れたからといって、それで学習が終わるわけではないですし、逆にスコアが低くても英会話を楽しむことは可能です。
- TOEICで600点の人が、積極的にコミュニケーションをとり英会話を楽しんでいる。
- TOEICで900点以上が取れてもネイティブのナチュラルスピードの英語が聞き取れない。
スコアが低いからダメと言うわけでもなく、高得点だから英語が完璧と言うわけでもないのです。
私は翻訳学校に通っていましたが、プロを養成するクラスで求められる英語力は「TOEIC900点以上」でした。
英語のプロを目指すには900点はスタート時点に過ぎません。
良くも悪くも1つの目安と心得て、上手な距離感を持って付き合うのがおすすめです。
時にはTOEICから離れ英語学習を楽しむ
テスト勉強というのは必ずしも面白くないものです。実際、「TOEICのための学習は楽しくない」という声もよく聞きます。
そんな時は、少しTOEICから離れて英語学習を楽しむようにしてみてください。
「点数アップのためにTOEIC教材でしか勉強してはいけない」、なんてことはありません。
確かに、効率よく点数を上げるにはTOEICの教材で学ぶのが1番です。けれども、英語力が上がればTOEICのスコアも上がります。
学習のモチベーションを維持するためにも、ときにはTOEICから離れて自分が楽しいと感じる学習も取り入れるのがおすすめ。
- 英会話レッスンを楽しんでみる
- 好きな海外ドラマを見る
- 簡単な英語で興味のある本を読む
上記のような学習も役に立ちます。TOEICに疲れて英語が嫌になってしまわないように、上手に息抜きもしましょう。
TOEICで人の価値は測れない
一生懸命勉強しているのに思うように点数が上がらないと、「TOEIC900点のあの人に比べ500点しかない私はダメだ」と、英語力だけではなく自分の価値が下がったように感じてしまうこともあるかもしれません。
当たり前のことですが、TOEICの点数で人の価値が決まるわけではありません。
私はTOEICで980点を持っていますが、だからと言って人として優れているというわけではありません。たかだかTOEICくらいで人の価値が決まるはずはないのです。
TOEICはあくまで英語力を測るもので、人の価値を測るものではありません。スコアに振り回されて、本質的なことを失う人もいるので、気をつけたいです。
まとめ:「TOEICは意味ない」なんてことはない!英語力アップに上手に活用しよう
「TOEICは意味ない」という人もいますが、私はそうは思いません。
TOEICで測れないスキルはあるし、TOEICの点数にこだわりすぎるのは良くないですが、TOEIC学習を通じて英語力が鍛えられるのも事実。
上手に付き合えば、TOEICはあなたの英語力アップに大きく貢献してくれます。
「意味ない」と言って無視するより、上手に活用して使える英語力を身に付けるきっかけにしてみてはどうでしょうか。
おすすめなのは、「TOEICは英語力の1つの目安である」と考えて、程良い距離感を取りながら英語学習に取り入れること。TOEICのスコアとスピーキングの実践力の両方を手に入れられたら最強です。


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