英語学習にシャドーイングがいいらしいと聞くけど、シャドーイングにどんな効果があるのか実はよくわからない。
そんなことはありませんか?

シャドーイングでスピーキング力が上がるのかな?
シャドーイングの一番の効果はリスニング力の向上です。スピーキングにも良い影響はありますが、シャドーイングだけでは英語を話せるようにはなりません。



英文を見ながら読んでもいいのよね?
英文を見ながらおこなうトレーニングはオーバーラッピングといいます。シャドーイングは英文を見ずにおこないます。



シャドーイングって何なのか、どんな効果があるのか改めて考えてみましょう。
この記事では、シャドーイング指導歴10年以上の英語講師が、「シャドーイングとは何なのかどんな効果があるのか」をお伝えしていきます。また、リピーティングやオーバーラッピングといった学習法との違いも解説し、どれをするのが良いかもお伝えします。
シャドーイングはおすすめのトレーニングです。記事を読んでぜひ皆さんもシャドーイングに挑戦し、英語力アップにつなげていってください!
- TOEIC980点、英検1級
- 留学経験ゼロで英語を習得
- 大手英会話スクールで10年以上指導
- 大学・法人研修講師10年以上
- 講師歴はトータル20年以上
- 日英翻訳の経験多数
- シャドーイングにどんな効果があるのか
- なぜシャドーイングがリスニング力の向上に良いと言われるのか
- リピーティングやオーバーラッピングとの違いは何か
- 自分に合うトレーニング方法は何か
- シャドーイング・トレーニングの流れ
シャドーイングの効果


シャドーイングで得られる効果はおもに以下の3つになります。
リスニング力の向上
シャドーイングでは、音声を聞いて2~3語ほど遅れてくり返し発話します。くり返し同じ音声を聞いてシャドーイングをすることで、正しく英語を聞き取る力がついてきます。
英語を聞き取った上で瞬時に内容を理解できるようにトレーニングするので、英語を理解するスピードもあがっていきます。
発音が良くなる
シャドーイングでは聞こえてきた音声をその通りに発音する練習をします。その結果、正しい発音が身につきます。特に音がつながって聞こえるリンキングや、音が脱落するリダクションなどの発音ルールが再現できるようになります。
発音が良くなることでリスニング力の向上にもつながっていきます。
スピーキング力の向上
ただ聞くだけでなく自分でも口を動かして発話するので、スピーキングにも良い影響があります。同じ英文をくり返しシャドーイングすれば語彙や定型表現なども覚えていきます。そうすれば、会話のさいにも英語が出やすくなります。
「聞く」というインプットをおこないながら「発話する」というアウトプットもおこなうので、スピーキングにもつながっていくトレーニングです。



ただし、自分で英文を作るわけではないので、シャドーイングだけでは話せるようになりません。
「英語を話せるようになりたい」と思うなら、話すためのトレーニングは別でおこないましょう。
- 英文の暗唱
- 瞬間英作文
- 英語日記
- 英会話レッスン etc.
なぜシャドーイングがリスニングに効果的なのか?


シャドーイングの1番の効果はリスニング力のアップです。では、なぜシャドーイングがリスニングの向上につなるのでしょうか?



まずは、リスニングがどのようなプロセスでおこなわれるか考えてみましょう。
私たちがリスニングをするさいに以下の2つのプロセスをふみます。
- 音声知覚(音声を聞きとり単語を認識する)
- 意味理解(聞き取った単語や文章の意味を理解する)
そもそも音を聞き取れなければ内容を理解できません。音を聞きとり単語を認識し、それから意味を理解するのです。


上のイラストのように、「ゲラッ」という音を聞いてもそれが「get up」という単語と認識できないとリスニングはできません。
「get up」を「ゲットアップ」と覚えていたら、聞き取れないわけです。



日本人はとくに英語の発音を聞き取るのが苦手です。
発音を聞き取り単語を認識できたら、今度はそこから意味の理解にすすみます。「get up」は「起きる」という意味だと知っていれば、その情報を脳内で処理して意味を理解します。
単語や熟語の意味を知らなければ、内容の理解はできません。



発音を聞き取った上で意味をすぐに理解する必要もあります。
文章の聞き取りになればさらに難しくなります。


聞き取った英語を正しく理解するには
- 単語・熟語の知識
- 文法の知識
これら両方が必要になります。こういった英語の基礎知識があってはじめてリスニングができるようになるのです。
さらに、会話では前後の話の流れもふくめて意味を理解します。
A: I’m so sleepy. I had to get up early today.
(すごく眠たいよ。今日は早起きしないといけなかったんだ)
B: Oh, what time did you get up?
(へえ、何時に起きたの?)
A: At 6:00.
(6時だよ)



前後の流れがないと、いつの話をしているのかわからないね。
リスニング力をあげるためには、まずは単語や文法といった英語の基礎知識が必要です。その上で発音を聞き取り、すばやく理解できるようなスピード感も身につけていきます。
*リスニングがなかなか伸びないという人は、ディクテーションで原因を突きとめることができます。以下の記事でその方法をお伝えしていますのでご参考にしてみてください。


2種類のシャドーイング


シャドーイングは単語や文法という英語の基礎知識をあるていど身につけてからおこなうのが効果的です。その上で、リスニングの2つのプロセスである「発音の聞き取り」と「意味の理解」ができるようにシャドーイングをおこなっていきます。
リスニングのプロセスが2段階あるように、シャドーイングにも2つの段階があります。
- プロソディ・シャドーイング:音声知覚のためのシャドーイング
- コンテンツ・シャドーイング:意味理解のためのシャドーイング
プロソディ・シャドーイング
リスニングの第1段階である音声の聞き取りをできるようにするシャドーイングをプロソディ・シャドーイングといいます。
「プロソディ」とは「韻律」という意味です。音声学で、リズムやイントネーション、ストレス(強勢)のことを表して使われます。



英語のメロディーのようなものと言うとわかりやすいでしょうか。
プロソディ・シャドーイングでは、特に以下のポイントを意識して英語の発音を再現していきます。
- 英語の音声変化
(音がつながるリンキング、音が脱落するリダクション等) - 強弱のリズムや抑揚
- イントネーション



自分が正しい発音を再現できるようになれば、聞き取りもできるようになっていきます。
リスニングのさいの脳の働きを以下のイラストで見てみましょう。音声を聞きとるのに脳の作業スペースをたくさん使ってしまうと、意味を理解するための作業スペースが少なくなります。音声の聞きとりがスムーズにできれば、意味を理解するためにエネルギーをたくさん注げるのです。


日本人の多くは音声知覚ができていないので、ここにエネルギーをたくさん使ってしまいがちです。なので、まずはプロソディ・シャドーイングで正しい発音を身につける練習をします。
コンテンツ・シャドーイング
プロソディ・シャドーイングで音声知覚をスムーズにできるようになれば、意味を意識してシャドーイングしていきます。



リスニングの第2段階にすすみます。
内容を意識して行うシャドーイングをコンテンツ・シャドーイングといいます。コンテンツとは「中身」という意味です。発音だけでなく意味にも意識をむけてシャドーイングをするのです。


正しい発音で意味を意識しながらシャドーイングを行うことで、聞こえてきた英語を聞きとりすぐに意味を理解できるようにします。音声認識と意味理解の2つのステップをすばやくおこなえるようにトレーニングします。



意識することを変えるとシャドーイングの質も変わっていきます。
最初は発音の再現に必死で意味を意識するところまで気が回らないです。なのでまずはプロソディ・シャドーイングで発音の練習をしっかりして、それからコンテンツ・シャドーイングにすすむという2段階にわけてトレーニングする必要があります。
シャドーイングとは?リピーティングやオーバーラッピングとの違い


音読のトレーニングにはシャドーイングの他にもリピーティング、オーバーラッピングがあります。この違いがよくわかっていないという人が実は多いです。
何が違うのか、それぞれにどんな効果があるのかみていきましょう。
リピーティング


リピーティングでは、英文を最後まで聞いたあとにくり返し発話します。英文を見ながらじっくり発音を確認できます。発話のときも自分のペースで読み上げができるので、難易度はもっとも低いです。
英語のレッスンで「Repeat after me」と言われて先生のあとについてくり返す練習をしますよね。あれと同じです。



初心者におすすめの練習法です。
- 自分のペースで発音できるので初心者にもやりやすい。
- 文字を見ながら音声を聞けるので、発音と単語が結びつきやすい。



ただし、注意点もあります。
音声を聞き終わったあとに文字を見ながら発音をすると、そのさいに自己流の発音に変換されてしまうことが多いです。特に文章が長くなると、聞いた発音を忘れてしまってうまく発音できなくなります。
英語のリズムやスピードなども身につけにくいです。
- 最後まで聞いたあとに発音すると自己流の発音になってしまう。
- 英語のリズムやスピードが身につきにくい。
オーバーラッピング


オーバーラッピングでは音声の上にかぶせて発音します。音声を聞きながら同時に発話もおこなうのです。
オーバーラッピングは英語のリズムやイントネーションを身につけるのに良いトレーニングです。音声と同じ速さで練習するので、スピードについていく練習になります。



英文を見ながら発音するので、初心者にもおすすめです。
- 英文を見ながらできるので初心者にもやりやすい。
- 英語のリズムやイントネーションを身につけられる。
- 音声に合わせておこなうのでスピードも身につく。



オーバーラッピングにも注意点があります。
オーバーラッピングは「聞く」と「読む」を同時におこないます。文字を見ながら発音すると、自分の頭の中にあるカタカナ発音にひっぱられてしまうことが多いです。
私がこれまで教えてきた生徒さんもほとんどの方がオーバーラッピングでは発音の再現がうまくできません。文字を見るとつい文字通りに発音したくなるのです。
文字があることで音をきちんと聞かなくなることが非常に多いのです。
- 文字に気を取られて音をきちんと聞かなくなりがち。
- 文字にひっぱられて発音の正しい再現ができなくなる。
シャドーイング


シャドーイングでは2、3語くらい遅れて音声にかぶせるように発話します。リピーティングとオーバーラッピングの中間のような感じです。音を聞いてすぐにくり返し発音します。



聞こえた音をすぐにくり返すので、正しい音を再現しやすいです。
基本的にシャドーイングは英文を見ずにおこないます。これがリピーティング、オーバーラッピングとの一番の違いです。
音声のみでおこなうので初心者にはハードルが高く感じられます。しかし、文字なしでおこなうからこそ音声にしっかり集中できるのです。



聞き取れないとシャドーイングはできないので、何とか聞き取ろうと音に集中することになります。
くり返し練習することでだんだんと音声が聞き取れるようになってきます。その結果リスニング力がついてくるのです。
- 音声だけでおこなうので発音にしっかり意識が向く。
- 聞こえてきた音声をすぐにくり返すので発音が再現しやすい。
- 英語のスピードも身につく。



メリットがたくさんありますが、難易度はいちばん高いです。
コツが必要なので慣れるまで時間がかかります。難しいので挫折してしまいがちなのも難点です。
- 初心者にはハードルが高く感じられる。
- 慣れるまで時間がかかる。
- 難しくて挫折しやすい。
ただ、3つのトレーニングの中でテキストなしで練習できるのはシャドーイングのみです。ながら学習ができるので、忙しい社会人に向いている学習ともいえます。
初心者は再生スピードを落としてみるなど工夫することでシャドーイングのハードルが下がります。



シャドーイングの前にリピートやオーバーラッピングをしておくのがおすすめです。
いきなりシャドーインをするのではなく、段階をふんで取り入れていけば英語力の向上につながる効果的な学習が可能です。
シャドーインを添削してもらえるアプリがあるので、そういったサービスを使ってみるのもおすすめです。特に慣れるまでは、コーチに相談したり添削を受けたりすると効率が上がります。


結局どれが一番いいのか
リピーティング、オーバーラッピング、シャドーイングの違いがわかったけど、じゃあ結局どれをするのが一番おすすめなの?そんな疑問が出てくるかもしれませんね。
3つのトレーニングはそれぞれにメリット・デメリットがあり、それぞれ補完し合う関係にもあります。なので、全部やるのが理想です。
- リピーティング
- オーバーラッピング
- シャドーイング
この順番でおこなうのおすすめです。この順番で難易度も上がっていくので、レベルに応じてどのトレーニングにより時間をかけるか変えていくと良いです。
初心者:①リピーティングをしっかり
中級者:②オーバーラッピングをしっかり
上級者:③シャドーイングをしっかり
中級レベル以上になるとリピーティングは省略してもかまいません。逆に、初心者はシャドーイングまでたどり着けなくてもOKです。
ただ、3つのトレーニングの中でテキストなしでできるのはシャドーイングのみです。家事をしながら、歩きながらなど「ながら学習」ができるのもシャドーイングの利点です。



ステップ①や②で準備をしておいた上で、隙間時間で③のシャドーイングを取り入れるのがおすすめ。
シャドーイングがどうしても難しい、スピードについていけない、という人は以下の記事もご参考にしてみてください。


シャドーイングのやり方


シャドーイングをするときはオーバーラッピングなども含めておこなうのがおすすめです。トレーニングの基本の流れを確認しておきましょう。
- 英文を見ずに音声を聞いてリスニングの理解度をチェック
- スクリプトを確認して内容をチェック
- 英文を見ながら音声を聞いて発音を確認
- 英文を見ながら音声に合わせてオーバーラッピング
- 英文を見ずにプロソディー・シャドーイング
- 意味を意識しながらコンテンツ・シャドーイング
これが基本の流れですが、初心者は③のあとにリピーティングを入れると良いでしょう。上級者は④のオーバーラッピングを少なめにしてシャドーイングを多くします。



自分のレベルに合わせてアレンジしてみてください。
同じ英文を使って少なくとも3~4日くらい毎日おこなうのがおすすめです。色んな英文をちょっとずつシャドーイングするのではなく、1つの教材でくり返しおこなうようにしてください。
まとめ
シャドーイングは特にリスニング力の向上に効果があるトレーニングです。正しい英語の発音を身につければ英語の聞き取りができるようになります。英語を理解するスピードも上がってきます。
同じ英文でくり返しシャドーイングすることで単語や定型表現の定着にもつながり、スピーキング力の向上にも役立ちます。
- リスニング力の向上になる。
- 英語の音声変化やリズムなどが身につく。
- スピーキング力の向上にもつながる。
- シャドーイングだけでは英語を話せるようにはならない。
- 英語の基礎力をつけてからおこなう方が良い。
- 慣れるまで時間がかかり初心者は挫折しやすい。
万能なトレーニングではありませんが、おすすめの学習法であるのは間違いありません。リピーティングやオーバーラッピングと組み合わせていけばより効果的な学習がおこなえます。目的や注意点を理解してぜひ積極的に取り入れていきましょう!
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